5・闘志

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「まったく…なんで貴方がこんなところにいるんですか?」 ――事務所がすぐそこだからです。 「そういう零さんも、よくここにモンスターがいるって分かったな」 「当たり前でしょう。私だってあの音が聞こえるんですから。それに、できるだけ多くのモンスターを倒した方が有利に立てますからね」 「………」 どうやら本気で勝つ気らしい。よくよく考えれば、負けは死を意味するわけだから それなりに必死にもなるか。 それにしても…… 「…なんです?いきなり黙ったりして」 「ん、いや…その……そこまでして叶えたい願いってなんなのかなぁ~って」 「貴方には関係ありません。少なくとも…人に話すようなことではありませんわ」 零さんは ピシャリと言ってのける。それでその質問は終わりと言わんばかりの視線に言葉を失うも…… 「貴方はどうなんですか?」 まさかの向こうからの問いかけ。こちらにしてみれば意外どころではなく、当然のように言葉を失う。 「あぁ…願いか。そういうのは…今のところは無い…かな」 「――ッ、貴方…!」 「でも……!」 「――?」 「この力で、誰かが助かるなら……俺がライダーとして闘い続ける意味はそれだけで十分なんじゃないかって思う」 ナニカを守れないこと。 大切なモノを失うこと。 それは自分の中に大きな闇が出来るだけでは済まされない。 無関心な他者への怨恨。 無力な自身への呪詛。 限りなく理不尽で残酷な世界への嫌悪。 誰あろう、自分が経験したことだ。 だからこそ―― 「俺は守るためにこの力を使う。それが、俺が龍騎として歩むべき道だと信じてる」 「……周りのライダーは、皆敵なのですよ。私を含めて…。 それを承知で貴方は…そのような綺麗事を言い続けるのですか?」 「殺し合うのがライダーのルールなら、これは綺麗事じゃなくて邪道なんじゃないかな?」 「……!」 「でも、そんなのはどうでも良い。人を救うのに善も悪もない。 ただ俺は往くだけだ。俺が進むと決めた道を」 随分と久しぶりだ、 こんなに迷いの無い眼で人を見たのは。 「………」 零さんは、ただ口を閉ざしている。 そして―― 「良いでしょう。ならば私からは何も言いません。 せいぜい足掻いてみせることですね」 彼女はぷい とそっぽを向く。 だが、すれ違いに立ち去るその横顔は…どこか微笑んでるようにも見えた。
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