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「真由、テ、テストって、何?」
震える声で尋ねる詩織に、真由は不審な顔をした。
「なに言ってんの、学期末のことだよ。赤点とると、夏休みに補講やるらしいよ」
気分が急降下。
墜落街道をまっしぐらに進む。
「俺、数学やべえよ。徹夜しねえとな」
拓也はめんどくさそうに頭を掻いた。
だが詩織の場合、数学に限ったことではない。
忘れてた。つまり、勉強をしていない。
もともと授業もろくに理解していないのだから、当然知識なんてこれっぽっちも持ち合わせていない。
これから導き出せる答えは一つ。
頭が痛くなってきた。
拓也は携帯を開き、驚きの声を上げた。
「やべっ、もうこんな時間だ。真由、委員会議に遅れるぞ」
「マジーっ!?」
律と詩織への別れの挨拶をそこそこに、拓也と真由は慌てて走っていった。
嵐は過ぎ去り、しっかりと被害の傷痕を詩織に刻んでいった。
もはや、補講は決定だろう。
詩織は、ガクッと肩を落とした。
「まぁ、しゃあねえな。覚悟しようぜ」
何とも暢気な物言い。
詩織は、力無く顔を上げた。
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