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つい数時間前に、自分が取り調べた調書を確認しながら、その時の様子を思い浮かべる。
「社長にクレームしに行った時、いつもの事かみたいな顔で」
いつもの事か、みたいな顔である。
北方は、そこに引っ掛かった。そして、若い相棒を呼び寄せ調書を渡す。
「気にならないか?」
「何がですか?」
「いつもの事か、みたいな顔って所だ」
「いや、別に……」
県警の若い刑事は、まるで酒口のようにしれっと答えた。
北方は、説明する。
4人の資産家を年齢順で並べると、西口は東山の次で2番目になる。仮にいつもの事を、東山に当て嵌めたとしてもしっくり来ない。
「東山氏と西口氏の間に、他にもクレームを受けた事で、愛人を斡旋した夫婦がいた?」
「可能性は低くないだろ? それどころか、西口氏の後で北田氏の前の期間だって、斡旋した可能性はある。もちろん、その後にも十分にだ」
「北さん、それって……」
「余罪がまだあるって事と、何故あの4組なのかって新たな疑問が生じるよな」
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