最終章 親子の絆

5/99
1862人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
   つい数時間前に、自分が取り調べた調書を確認しながら、その時の様子を思い浮かべる。 「社長にクレームしに行った時、いつもの事かみたいな顔で」  いつもの事か、みたいな顔である。  北方は、そこに引っ掛かった。そして、若い相棒を呼び寄せ調書を渡す。 「気にならないか?」 「何がですか?」 「いつもの事か、みたいな顔って所だ」 「いや、別に……」  県警の若い刑事は、まるで酒口のようにしれっと答えた。  北方は、説明する。  4人の資産家を年齢順で並べると、西口は東山の次で2番目になる。仮にいつもの事を、東山に当て嵌めたとしてもしっくり来ない。 「東山氏と西口氏の間に、他にもクレームを受けた事で、愛人を斡旋した夫婦がいた?」 「可能性は低くないだろ? それどころか、西口氏の後で北田氏の前の期間だって、斡旋した可能性はある。もちろん、その後にも十分にだ」 「北さん、それって……」 「余罪がまだあるって事と、何故あの4組なのかって新たな疑問が生じるよな」
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!