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3月11日・午後12時15分
僕はゆっくりと席を立った。
残ったコーヒーを立ったまま一気に飲み干し、安物のコップを机において21番室を出た。
受付の美人だけどやる気の無い顔のお姉さんに3時間パックの料金を支払い、会員カードを受け取ってネット喫茶を出た。
このとき、午後12時15分。
「あ、研くんじゃーん」
駐輪場に停められていた僕の自転車に跨ろうとしたとき、フェンスの向こうから声がした。
ネット喫茶の駐輪場の隣には、1mほどの段差と2mほどのフェンスを挟んで、最近出来たゲームセンターがある。僕もたまに行く。
周りの古いお店には無い、新しい筐体があって、入るたびに以降金欠で困る事になる。
「研くん何やってたの?」
「ネット喫茶行ってたの。悟れよ」
「えー、俺鈍感だからわかんねぇや」
僕は跨った自転車の位置を180度回転させ、片足をペダルにやった。
「どこ行くの?」
「知ってた?もうすぐ世界は破滅するんだよ」
「……ついにイカレちゃったか」
「だから僕は」
馬鹿を無視してもう片方の足をペダルに乗っけて、自転車が倒れないうちに漕ぎ出さなきゃ行けないんだ。前へ。
「おい、いくのかよ!『だから僕は』なんなんだよ!」
馬鹿が。行間を読め。僕は脳内で一人毒づいた。
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