その腕が呼んでいる

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「え?…そう?光輝の気のせいだよ。」 笑顔で返したのに、光輝の目は疑いの色を濃くする。 「気のせいじゃないだろ?俺に話してみろよ。」 マグカップを握っていた両手の上に光輝の手が重なった。 ドキン。 それだけで心臓がうるさくなる。 …ほんと、私って単純なんだから…。 自分自身に呆れつつ首を振った。 「本当になんでもないの。…心配性なんだから。」 微笑んでマグカップから手を離した。 そして光輝の両手を挟むように包み込む。 「元気がないと思ったからこうして会いに来てくれたの?」 「ああ。」 「…それは光輝の勘違いだけど…でも嬉しい。ありがとう。」 「里海…」 「手冷たい…暖めてあげるね。」 言って、自分の熱を光輝に分けるように手を握った。 光輝は優しい。 いつだって、どんな相手にだって。 だからたくさんファンがいるのを知っている。 浮気相手にでもこんなに優しくしてくれるなんて…。 やっぱり、光輝を好きになったのは間違いじゃなかった。 ……今更どんな事実を知っても私は別れられない。 こんなに…光輝のすべてが愛おしくてたまらないんだから。 この日。 私は『浮気相手』でいる覚悟を決めた。
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