初めてのダンジョン

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 高くそびえ立つ、白い煉瓦の壁に囲われた中。中央にある小山がから下ってくる川が町中の水路を潤している、治安の良い下町“シェルダン”。  町は貴族から平民まで幅広く多くの人々が暮らし、昼間の商店街では祭りでもないのに沢山の人が集まり、とても活気に溢れていた。 「はい、安いよ安いよー! 畑で取れた新鮮な野菜、果物!! 今買わないと損だよー!」  テントの下で声を張り上げて客を呼ぶ商人。その手前には箱に詰められた色取り取りの野菜と果物。主婦が多く集まる此処で、客の年齢層には合わない少年が1人、その店に顔を出した。 「親父、林檎1つくれ」 「おっ、どうした兄ちゃんお使いか?」 「違う。いいからくれ」  黒いローブを身に纏った黒髪の少年。金髪や茶髪の者が入り交じる商店街では目立ち、商品を買いその場を離れても容易に目で追う事が出来る。 「おっ、アランいたいたー! やっぱ見付けやすいなお前」  そんなアランと呼ばれた少年の後ろから、ひょっこりと赤毛の少年が現れた。 「赤毛の貴様に言われたくない」 「えー。だって黒いローブ着てりゃそりゃ目立つだろ」 「魔術師は大抵ローブを身に纏っている。他の者と間違えないようにな」  アランは黄緑色の林檎を購入し終えると、赤毛の少年ことライラを連れ商店街を離れ、噴水が設置された広間へ向かう。そして空いているベンチに座り、地図を広げた。 「で、俺達は今シェルダンだから此処だろ?」  西に位置するシェルダンは、地図から見て左の端の方に書かれている。 「そうだ。そして、魔王は此処に居ると言われている」
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