~0年目、春~

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田舎の中の田舎。 店は一件しかなく、広がるのは山々と海。 後は特に無い。 そんな農村に、大きな荷物と共に一人の女がやってきた。 肩より少し長い茶色の髪を揺らし、同じ色の眼をパチパチさせる。 「ふぁ~…ほんとに何もないないですね~。」 キョロキョロと辺りを見渡し、目的地へと歩いていく。 彼女の名は『にじいろ』 農業高校卒業と同時にこの村にやってきた。 その理由は…。 「あ、あった!」 辿り着いたのは寂れた牧場。 手入れがされていないことが良く解る。 「おじいちゃん、おばあちゃん…私、頑張るからね!」 そう、にじいろはこの寂れてしまった牧場を復活させるために来たのだ。 叫ぶ彼女の後ろにゆっくりと近づく影。 「やぁ、にじいろちゃん。待っていたよ。」 「村長さん!こんにちわ!」 元気よく挨拶を交わす。 村長と呼ばれた中年男性は、帽子を取って笑う。 「荷物を置いたら約束通り、一緒に村を回ろうか。」 「はいっ!!」 必要な物だけを持つと村長の後に続く。 「村は広くないから、今日中に回れるよ。」 「そうですか…。」 (頑張って覚えなくちゃ!!) 牧場を出て真っ直ぐ進み、直ぐに足を止めた。 「先ずはここ。」
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