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月はない。
星もない。ここ最近、曇り空が続いている。
丑の刻だというのに、月がないのはなんとも心細く、幻想的な世界からかけ離される。
目の前にまず見えるのは、曇った漆黒の夜空だ。
とはいえ、ここは室内。透明な窓を挟んでいる。
ガラスを割れば、人の3倍程度の巨体を誇る巨人族が、屈むことなく通り抜けることができそうなほど大きな窓だ。
いや、そもそも、巨人族にとってはガラスの有無など問われないだろう。
室内は暗かった。
また巨人族で例えれば、彼らが十人は裕に寝そべることができるほど広いこの部屋に、蝋燭が三本灯っているだけ。
月の明かりがない今、頼れる明かりはそれだけ。
暗いのも当然だ。
見上げている目線を下に下ろす。
昼間の活発さが嘘のように静まり返った民住区と、夜にも関わらず活発な商業区が見渡せる。
この部屋があるのは、国の中央に聳える王宮の頂上だ。
その付近はある程度見渡せる。
暗いのに活発かそうでないかを見て取れたのは、『明かりが点いているかいないか』を見比べたからだ。
『ファルフーレ王国』
それがこの国の名で、ここはその中心、『王都ファルフーレ』。
そして、ファルフーレ国王『ケルティア.ルーカス.ファルフーレ』は、体を反転させて大きな窓から遠ざかる。
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