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「んーっ!……いい天気だなぁ」
ぐーっと伸びをして、雲ひとつない綺麗な青空を仰ぎ見た。
ただいまの時刻、15時30分。
授業中(しかもテスト前)にも関わらず、日の光に誘われて、学園の敷地内の森の中をふらふら~っと彷徨い歩く。
夏前で天気がいいのに、今日は比較的涼しくて過ごしやすいから散歩にはいい感じ。
「とうちゃーく」
最近の流行りの曲を鼻唄で歌いながら、一通り歩き回り、最終的にやってきたのは、サボりの定番と化してきた噴水のある裏庭。
ミーンミーンと少ないながらも鳴き始めている蝉の声を聞きながら、いつものベンチに腰を降ろした。
「んんーっ」
すぐにベンチに横になり、青い空を眺める。
ぽかぽかと暖かい日差しに吹き抜ける涼しい風。すごく気持ちがいい。
ふわっとあくびが出るのも仕方がないと思う。
そっと瞼を閉じると、いつの間にか眠りに落ちていて……。
どれくらいの間寝ていたのかはわからない。長かったかもしれないし、短かったのかもしれない。でもそんなのは今関係なくて。
ただただ気持ちいい。
なんだろう……?
なにかが頭を撫でている?それに太陽の光とは別のなにか……あたたかいもの。
俺は無意識にそのあったかいものに擦り寄った。
「随分大胆だな」
小さな笑い声とともに降ってきた声に、?となってゆっくりと目を開けた。
「おはよう」
「……」
寝ぼけた頭がこの人物を認めた途端、一気に覚醒し、がばりと起き上がった。
ええーっと……ええーっと……。
「成瀬?」
不思議そうに俺を見る切れ長で漆黒の二つの目。
問いかける声はちょっと掠れ気味のバリトン。
「なんであんたが!」
此処にいるんですかあっ!?
「いたら悪いのか?」
「悪いっ!!」
俺の安眠タイムを妨害しやがって!
せっかくふわふわした場所で幸せ気分だったのに、一気に奈落の底へ突き落とされたような感じだ。
「帰るっ!」
不快で不快で……。
もう散歩も惰眠を貪る気にもなれなくなって。会長に背を向けて、帰ろうと足を一歩、二歩、三歩と踏み出したとき。
「いいのか?」
俺の背中に向かってかけられた声。笑いを含んでいるその声にさらにイラァってした。
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