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プロローグ
ここは霧が深く立ち込めた山の奥。
草木に囲まれた湖のほとりに彼らはいた。
空は青く澄み渡っており、時折吹く穏やかな風と鳥の囀りが心地良い。
「遂にこの時が来たか……」
ふと、一人の少年が口を開く。
短めの黒髪に整った顔立ちをしており、腰には剣を下げている。
「本当にこれでいいんだね?」
その少年に向かって一人の青年が尋ねた。
背中にまで達した長い銀髪と、サファイアのように澄んだ青い瞳が特徴的だ。
湖のほとりではこの青年と、少年を含む六人の男女が向かい合って立っていた。
「これでいいんだ。俺達の戦いはまだ終わっちゃいない。いつかまた、俺達は選択しなくちゃいけないんだ。」
「君達と同じように戦う者をかい?」
青年に尋ねられた少年は頷いて返した。
彼らには分かっていたのだ。
自分達の築き上げた平和な時が偽りのものであるという事を……
そしてその時があまり長続きしないという事を……
「分かったよ。なら私は君達の意思を尊重しよう。そして君達に再び選択の時が迫った時、私は君達との約束を果たすと誓うよ。」
「ああ……よろしく頼むぜ……」
黒髪の少年と銀髪の青年は握手を交わして頷き合った。
彼らの戦いは一先ずの終焉を迎えたのだった……
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