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傷を負って、そこからゆっくりと赤黒い血が滲み出る。 何とかその滴り落ちる血を止めるために、白いガーゼを押し当ててみたり、その部分を圧迫してみたりするけれど、血は一向に止まらない。 止めるのは諦めて、血を全部抜ききってしまおうかとも思う。 けど、他の機能を失うリスクを背負うほど、私にはそんな勇気もない。 私の心に引っ掻き傷を付けているのは彼。そこをナイフでえぐっているのは私。そして、彼によってできた傷を私が無意識にナイフでえぐってることも知らずに、更にえぐった上から、脇見をしながら引っ掻き傷を付け続ける彼。 私達は、その繰り返し。 その現実に気付いているのは、私、唯一人。 傷から血を流している私、唯一人。
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