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「えっ!? あの曲カズが歌詞書いたの?」
私が、驚きの声を上げると
「うん。ちょっと恥ずかしいんだけどねっ」
カズは、少し照れ臭そうにいう。
私は、カズに対して尊敬にも似た感情が、芽生えていた。
「凄いよ、凄いよ。めちゃくちゃいい詞だなぁって、僕、思ってたんだから」
カズは、少しずつ自分の事を話し出した。
「俺、俳優とかもしてて、そっちが、注目されてるけど、本当はずっと、音楽がしたくてさ」
「うん、うん」
私は、カズとこうやって、音楽の、これからの話をする事が、嬉しかった。
「このユニットデビューに、かけている所があってさ」
カズは、真剣な眼差しでそう語る。カズと打ち解けて、私も、今の素直な気持ちを、口にした。
「カズの歌、本当素敵だもん。デモテープ貰った時、僕みたいな、昨日入ってきたような未経験者が、歌っていいのかなって、思ったもん。カズだけの歌の方が、いいんじゃないかなって、思うくらい…」
ぱっと見た、カズの顔が曇っていた…
「俺だけじゃ駄目なんだよっ…」
とげのあるその口調で、今までの和やかな雰囲気は、一気に打ち消された。
私は、慌てて口を開く。
「あっ…ごめんっ。僕、なんだか変なこと言っちゃったよねっ。2人で頑張っていこ…」
だけど、その言葉は、カズには、届かなくて。
「…未経験者って…社長は何考えてんだよっ」
カズは、冷たい声で、そう呟いた。
私は、必死に、自分の気持ちを訴える。
「あっ…僕、本当足を引っ張らないように頑張るから…本当頑張るから」
カズは、とても冷たい目で、こちらを見る。
「…ごめん…」
………え…………
カズは、その一言だけ残して、そのままレッスンスタジオから、出て行ってしまった。
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