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「んん? キミに用なんてないよ~。あるのはエンジェルちゃんにだけさ」
「はぁ!?」
こちらの警戒など露と知らず、飄々とした口調でぽっちゃり男は言う。
意味がわからない。イヴに用など、やはり普通じゃないだろう。
「あ~、申し遅れたね。ハイこれ」
「ん?」
ぽっちゃり男が胸のポケットから白い紙を取り出し、渡してくる。
その形、大きさからして間違なく……名刺。大学生にして何故に。
優人はそこに書かれた文字を見る。
「映画研究同好会、4回生、秋里 譲二<アキサト ジョウジ>……」
4回生。このぽっちゃり男、普通に年上・上回生である。そして聞き慣れない、恐らくそれはサークル名。
「映画、研究、同好会?」
「そう、映研♪」
普段からあまり聞かない名前、つまり有名ではないのだから、それほど大きなサークルではないのだろう。
映画研究同好会。その名前を鵜呑みにすれば映画を研究するサークルなんだろうが、正規サークルではないような気がするし怪しい匂いもする。
「まぁ気軽に“ジョージ”と呼んでくれ」
「呼ばない、ですから」
「“ジョージ・ルーカス”でも良いよ?」
「だから呼ばないって」
そう言っているのに、まるで聞いていない“ジョージ”は笑う。
ふざけているのか、しかしやはりこちらは笑えない。
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