3.フレーム

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  「んん? キミに用なんてないよ~。あるのはエンジェルちゃんにだけさ」 「はぁ!?」  こちらの警戒など露と知らず、飄々とした口調でぽっちゃり男は言う。  意味がわからない。イヴに用など、やはり普通じゃないだろう。 「あ~、申し遅れたね。ハイこれ」 「ん?」  ぽっちゃり男が胸のポケットから白い紙を取り出し、渡してくる。  その形、大きさからして間違なく……名刺。大学生にして何故に。  優人はそこに書かれた文字を見る。 「映画研究同好会、4回生、秋里 譲二<アキサト ジョウジ>……」  4回生。このぽっちゃり男、普通に年上・上回生である。そして聞き慣れない、恐らくそれはサークル名。 「映画、研究、同好会?」 「そう、映研♪」  普段からあまり聞かない名前、つまり有名ではないのだから、それほど大きなサークルではないのだろう。  映画研究同好会。その名前を鵜呑みにすれば映画を研究するサークルなんだろうが、正規サークルではないような気がするし怪しい匂いもする。 「まぁ気軽に“ジョージ”と呼んでくれ」 「呼ばない、ですから」 「“ジョージ・ルーカス”でも良いよ?」 「だから呼ばないって」  そう言っているのに、まるで聞いていない“ジョージ”は笑う。  ふざけているのか、しかしやはりこちらは笑えない。  
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