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力の条件-刹那-
2051年8月3日
中一の夏。
俺は、部活が終わり家に帰る途中だった。
少し古ぼけた教会に、隣接した大きめの洋館が俺達の住む九重館だ。
その門の前につくと、この暑い太陽が照らすなか、真っ黒なスーツをきて、汗もたらさずにつっ立っている男が目に入った。
俺は、無愛想な声でその男に声をかける。
「九重館になにか御用ですか。」
男は振り返ったあと、俺を一別すると困った顔をする。
「すいませんが館長さんはいらっしゃいますか?急ぎの用でして、できればすぐにお会いしたいのですが。」
俺は、少し不振に思いながらも、中でお待ち下さい。と言うと、玄関のほうへ歩いた。
鳴きやむことのない蝉をうざったいと感じながら、俺はドアをゆっくり開けると、どうぞと男を振り返る。
男は、ありがとうございますっと軽く会釈をした。
俺は、その会釈を最後まで見ずに館長室へ歩を進める。
短い廊下の一番奥の部屋をコンコンっとノックした。
別にいつもはせずに開けるのだが、後ろで見ている男が、妙に俺の勘に触るため、常識のない男だとは思われたくない。
どうでも良いとこプライドが高いのだ。
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