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この書は今から二百年前、シェイン共和国建国の礎を築いた男の伝記である。
名はレウレト=フォン=ルクレール。彼に関する伝記は幾百も編まれ、特に皇国に於いては根強い人気があり、聖書とナポレオンの伝記に次いで世に出版されている。
彼の生涯は実に波瀾万丈であった。
北中南米大陸征圧、オーストラリアの反乱を平定、さらには皇国を東亜細亜連邦の占領から救い、経てして露国攻略……。二十二年もの間に得た武勲は数知れず、絶倫の勇気を起こして常に、
「前進! 前進!」
と三軍を叱呼(しっこ)した彼は後に皇国に創られた自治区にて執政を司り、米帝の第三統領としての生涯を終えるまでの十余年……、もはや演劇の観すら禁じ得ない。
レウレトが創ろうとした国とは、そして彼の見た夢とは、はたして何だったのだろう。彼が世を去って二百年余、長年の謎であった出生や回想等が記された一つの書が世界に公開された。
それはレウレト・ノートと呼ばれ、そこには三人の女性の名が記されていた。一人は彼の母であり、いま一人は彼の妻であり、もう一人は友人である。
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