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はてさて。俺が異世界へと来てから既に結構なイベントが発生している所為なのか、時と季節が流れるのが早く感じる。入学式からの慌ただしい日々が過ぎ去り、五月も中旬に差し掛かった。
桜の色も寂しくなり、春から夏へと変わり始める準備季節。肌寒さも消え気温が少し高くなった今日この頃、無事に学園生活を始めてから一ヶ月以上を過ごすことが出来、色々と慣れてきた放課後の事だった。
「起きて――君」
未だに心地よい日差しの中、眠っている俺を起こす声がする。加えて、控えめに体をゆさゆさされる。けれど控えめなそれは、俺を逆に眠くさせた。
机は第二のベットとは良く言ったものだ。安心して部屋で寝るのとは、また一味違う。
「もぉ……ン君ってば」
なんとなく語調が強くなってきた。強くなったとか言うより、困ってる感じ。これはミズキの声だろうか。起きないといけないのは分かるけど、何ともこう、抗いたくなる。
ゆさゆさに任せてもう一回寝よう。ミズキには悪いけど、抗わせてもら──
「任せて。……首を、突き刺せば」
抗うのは良くない気がする
「起きるッ!」
「「~~っ!」」
命の危険を感じて起きる宣言と共に体を起こすと、そこにはミズキとエルが驚いてる姿があった。なにやらアタフタしている。
「おっ、おはようレイン君!」
「そっ、そうね、おはよ――じゃなくて、早く起きなさい」
何かを取り繕っている二人。まぁ原因は目に見えてるんだけど。
「……ミズキ、その剣の用途を教えてくれ」
ミズキが持ってる、一振りのレイピア。かなり見覚えがあるものだ。
「そ、その……レイン君があんまり起きないから」
「永遠の眠りに落としてしまえと……!?」
「ち、ちちち違うよ!」
「アンタ、仮にも起こしに来てくれた子に良くそんな事が言えるわね」
「ミズキ、ありがとう。そのレイピアを窓から捨てるから貸してくれ」
「ちょっ、何すんのよ! 返しなさい!」
「やっぱお前のじゃねーか! 刺殺を勧めてなんで悪気がないんだてめーは!」
「仕方ないでしょ!? 先生に呼ばれてるのにアンタが全く起きないんだから!」
先生? はて、身に覚えがない内になんか悪い事したか……?
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