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「先生って……トビさん?」
言いながら教室を見渡してみると、もうあまり生徒は残っていない。しまったな、寝過ぎたか。一応探してみたけど、トビさんも教室にはいないようだ。
「うん……対抗戦のメンバーは、後で俺の所に集まれって」
ミズキが困ったように言う。かなり困ってる。ううん、もっと早く起きてあげれば良かったという俺ともう少し困らせてみたかった俺が戦っている、アホか俺は。
隣でやーやー騒がしいエルに、レイピアを返す。ヒシと自分の細剣を抱きしめるエルにジト目を向けながらとにかく聞いてみた。
「なんかあったのか?」
「……というより、何も言われなかったのよ。とりあえず、集まれって。それなのにアンタとアイツが起きないから」
言われて見てみると、カイルはまだ机という名の海に沈んでいた。セレナが何とかしようとしているのを、フェイがニコニコして見ている。
「おい、フェイが試験管取り出したぞ」
「あー……カイル君」
「自業自得ね」
一ヶ月経って分かった事の一つ。自称化学者のフェイはまともな薬を作らない。いやマジであいつホントはバカなんじゃねえのかってくらい。
薬学の授業はいつも命懸けだ。何回内容不明の薬を飲まされた事か。
案の定、赤い煙を嗅がされたカイルはうわごとのように〝チェンジ〟と繰り返していた。わけが分からない。俺は少し自分を起こしてくれたメンバー構成に感謝したりしつつ、とにかく先生を探すために立ち上がった。
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