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「オレたち、もう別れよう。」
何回聞いた台詞だろう。
その度にいっそ死んでしまいたいと思ってきた。
何回聞いても慣れることはない、できれば聞きたくない言葉だ…。
「はぁ…、死にたい。」
「そうか、じゃあ手伝おうか?って、おい!」
アタシが落ち込んでいるのを見て、親友の絵美がノリツッコミをして励ましてくれている。
これも何度かあった光景だ。
「あ~ぁ、こんなことなら男に産まれて絵美と付き合いたかったよ…。」
「やめてよ、アタシだって男の前では化けるんだから。」
「化ける?」
「化けるよ~、有希だってそうじゃん。一回彼氏といるときに会ったら別人みたいだったじゃん。」
「アタシが?ウソ~?」
「ウソじゃないよ、しおらしくなっちゃってさ、有希らしくなかったよ。まぁ、誰でもそうだろうけどさ。」
「アタシらしくなかっ…た?」
『アタシらしくない』
その言葉がひっかかっていた。
アタシはいつもアタシらしくしているつもりだった。
でも、親友の絵美から見ると彼氏といるときのアタシはアタシらしくなかったんだ。
それはホントの自分を出せてなかったってこと?
「お前がわかんないよ。」
言われたことを思い出す。
そうだ、アタシはアタシらしくなかったんだ。
ホントの自分が出せて、ホントのアタシを好きになってくれる人じゃなきゃダメなんだ。
なにかがふっ切れた。
「絵美~、ありがとう~チューしちゃう❤」
「な、何?ちょ…、キモッ💧」
しばらくしてアタシたちはお互いに気になる人を連れてWデートをすることにした。
4人集まって簡単な自己紹介をしたあとアタシと絵美は顔を見合わせる。
「プッ。」
思わず吹き出した。
「らしくねーよ!」
二人同時に言った。
男の子たちはきょとんとしていたが、すぐに4人で爆笑した。
それからもアタシたちは時々4人で集まって「自分らしさ」を確認しあっている。
おわり
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