プロローグ

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 荒れ狂う海に囲まれた孤島。  海流や気候など様々な事象が重なり、その島は人が近寄れるような場所ではなかった。  当然他の大陸から人が来訪することもなく、地図にさえ載っていない忘れられた島――。  過去には他の大陸との交流があったと思わせるような記録が残っているが、ふとした自然の悪戯がこの島への侵入を阻み、大陸に住む人々の記憶から忘れられた島へと変えてしまったのだ。  しかし実は今でも、諸外国と交流があった当時から生息していた人間を含む様々な動物や植物、そして魔物が存在している。  ただし人間が住んでいるのは緑豊かな土地が広がる島の北側ではなく、干からびて枯れ果てた大地が広がる南側の土地。  島の南側は水気のない枯れた大地が広がっているのだが、一部分だけ緑豊かな土地がある。人々はその場所に集まるようにして生活していた。  言うなれば砂漠のオアシスのような場所で細々と生活しているのである。  悠々と聳え(そびえ)たつ西洋風の城を拠点に、賑やかな城下町からはこの国の活気が窺える。  城の庭では新緑の木々に止まる小鳥たちの囀り(さえずり)が一日の始まりを告げ、その傍らでは楽しげに語らう仲の良さそうな十代後半くらいの男女の笑い声がしていた。  しかしそんな平和な光景を壊すような強風が吹き荒れるとともに、空気の振動が体感出来る程の轟音が轟く(とどろく)。
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