妖怪鉛筆落とし

10/11
209人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
何かにつけて 「俺は病気だから仕方ないだろ! お前は医者が何ともないって言ってるんだから怠けるな」 あんたは好きで病気になったんだろーが。 医者の言いつけも周囲の忠告も何ひとつ聞き入れず、すべて自堕落さが招いたことじゃん。 しょっちゅう「具合が悪い」と会社を休んではパチンコへ出掛けたりして、便利なサボる言い訳に使ってたじゃん。 食事中も布団から起きないくせに、私に暴力を振るうときはウソみたいに元気なんだねw そう心の中で嘲笑うことで何とか自分を保っていました。 正直、死んで欲しかった。 幼い頃から憎み続け、この手で殺すことを考えたのも一度や二度ではありません。 でも成長するにしたがって、憎しみばかりでからっぽの自分に気が付いてしまった。 このままいつか見た怨霊のように、永遠に恨みを抱き続けるなんて空しすぎる。 それに発作で苦しむ父の姿を目の当たりにしたら、思わず救って欲しいと何かの神さまに祈っていた。 家族だからではなく、人が苦しんでいることに胸が締め付けられたから。 震えながら「死にたくない」と繰り返す父がひどく可哀相に見えました。 ――今まで通り憎み続けるなんて無理だ。 こんなこと気が付かなきゃ良かった。 ずっと憎しみの力で自分を支えてきたのに、この先どうやって生きていけばいいんだろう…… 私に人の心なんて残っていなければ楽だったのに。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!