繭のライバル?

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燕羽…… どうしてあんな事を突然言ったのだろう 僕は燕羽と一緒に居られる事がすごく嬉しいのに……無理矢理なんかじゃなくて本当に嬉しいのに さっきだって、燕羽が悲しむんじゃないかと思ったから何もしなかっただけ 悔しいとかそんな感情よりも燕羽が悲しむ顔が見たくなかったから…… うさぎのジャージに着替えて制服をハンガーにかける時に気が付いた 「………これを見たから」 背中についた足跡に燕羽は気付いたんだ だから急にあんな事を どうしよう このままでは誤解されたまま燕羽が僕から離れてしまいそうで…… 「それより燕羽の頭を冷やさないと」 さっき支えた時、かなり熱かったからきっと熱が上がったのかも知れない キッチンの冷蔵庫から氷を取り出したいのに、やり方がわからない タオルはあったけど氷…… 「これでいいかな」 奥にあったビニール袋に入った氷を見つけてボールに入れた 「冷たい……」 どんなに勉強が出来ても、楽器が弾けても、絵が描けても、頭を冷やす氷水を作る事にこんなに時間を費やしてしまうなんて情けない さっきだってそう 制服を一人で脱ぐのに苦労した ボタンを外すのにも時間を費やした 今までそれを家では執事がやっていた ここに来てからは燕羽がやってくれていた それが当たり前だと思っていた結果がこれだ 冷たい水に入れたタオルも満足にしぼれない 時間をかけてタオルをしぼり、燕羽の部屋に向かった 「燕羽」 返事がない 眠っているのかな そっとドアを開けてベットで寝ている燕羽を見つめた 「寝てる」 部屋に入りカーテンをそっとしめた 「……ごめん…繭…」 「えっ?」 慌てて振り向いて燕羽を見つめた 「俺が……頼りない…ごめん……ごめんね」 「燕羽」 夢の中でも僕の事を…… それに怒るのではなく自分を責めるなんて そっとタオルを額の上に乗せて、手を握りしめた 「ごめんなさい……僕が嘘をついたから……」 だけど、本当の事を言えば誰にやられたのかと聞かれる 「すごい熱」 急いで知り合いのドクターを呼んで燕羽を診察してもらった 「燕羽は?」 「風邪ですね、部屋を乾燥させないようにして水分を与えて下さい」 「ありがとう」 「薬はこれを」 「わかった」 「では、私はこれで」 「忙しいのにありがとう」 「いえ、繭様も風邪をひかないように」 「大丈夫」 注射が効いて来たのか、漸く呼吸が落ち着いて来た
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