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『オンソンバ×××…ハッタ。オンソンバ×××…ハッタ。オンソンバ×××…ハッタ。』
何処からともなく真言が響く中、彼女は横で震える高貴な人物を抱くようにして誰ともなく命令をする。
「早よう、早よう平城京へ戻るのじゃ!」
歳を重ねるほど妖艶さを増した風貌の彼女は、頭の中で響く真言に脱力感を覚えながら暗い夜道を急がせていた。
彼女らは目的地へ着くと安堵する間もなく、大勢の兵士に囲まれていることに焦っていた。
特に彼女は先程から頭の中で響く真言に狂いそうなほど気持ちが蝕まれている。
彼女の横でへたり込んでいる高貴な人物を始め、周りの側近達や兵士までも戦意を喪失している。
もう周りを囲む兵士に誰もが戦う雰囲気さえも無くしていた。
「御上!お立ち下さい。貴方は帝ですよ」
「もう許してくれぇ。朕はもう疲れた」
彼女にとっての最後の切り札であった高貴な人物はもう立ち上がることさえ出来ないようだ。
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