悪ノ娘1

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 これはむかしむかしの話。  この国がまだ、王政だった時のこと。  その国の最後の王女。  当時、彼女は齢14歳の少女だった。 「さあ、跪きなさい!!」  王宮に響く甲高い少女の声。  たった一つの玉座。  そこに座るのは、まだ少女と呼べる年頃の、この国の最高権力者。  黄の国と呼ばれるその国は、金髪に蒼い瞳の、黄色のドレスがよく似合う愛らしい少女が治めていた。 「王女様」 「なあに?大臣」  一人の大臣が進み出て傅く。  彼が何の仕事をしているか、王女はすぐに思い出せなかった。  それに気づいた、王女と瓜二つといえるほど顔のよく似た召使がそっと王女に耳打ちする。 「財政管理の者ですよ」 「そう。それで、何の用なの?」 「実は……国の金が尽きかけております。このままでは……」 「なんだ、そんなこと」  何のことでもないように王女は言った。  その顔には、何の憂いもない愛らしい笑顔。  誰もが見ほれる笑顔を浮かべながら、彼女は言い放つ。 「お金が足りないのならば愚民共からしぼりとりなさいっ!!」  それは課税の指示。  現在をもってしても、国民達は重い税を背負わされている。  それをさらに増やせというのだ。  数人の大臣が眉間にしわを寄せる。  だが、王女の言葉に逆らう者は誰一人としていない。  何故ならば……  彼女の言葉を否定すれば、優秀な召使から粛清を受けるのだ。  死という名の粛清を。  こうして、国民達の肩に、更に重い税が課せられることとなった。
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