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……とある高校の体験入学。つまり、まだ中学生の代が、ゾロゾロと集まって高校の授業を試しに受けてみて欲しいという行事のようなもの。
俺は今その授業を、ただだるそうに座って聞いている。
俺の名は黒神 優(くろがみゆう)。
学力は並み。力も並み。容姿は……知らん。でも、俺に特徴なんてないってことは、自分で良くわかってる。
全国の高校生の平均上の能力を持つような高校生。つまりは普通ってことだ。
でも、これでいいと俺は思っていた。平凡な生活を送れれば、特徴や特技なんて持つ必要がないし、何より俺は目立つのが嫌いだ。
だが、変に人より変わったところを持って、人の目に晒されるよりかは、目立たず生きられる平凡な生活が一番だと、俺は考えている。
ただ、俺にはたった一つだけ非凡と言わざるを得ないものを持ってる。
でも、“ソレ”を持っていても俺は頭が良くなるわけでもないし、身体能力が思いっきり上がるとか、二重人格が発動するだとか、そんなファンタジックなことはない。
ハッキリ言ってしまえば、普通の日常生活を過ごす人には、あまり関係がないもの。
別にバレても大したことにはならないとは思うが、中学の時には誰にもこれをバラさずに生きてきた。
だから、この高校に入学するとしても、このことをバラすことはない。
いや、これより先も一生他の人にバラすことはないだろう。
話したところで……だ。
なんだかんだで大した印象も残らないまま授業が終わって、広い校舎の教室から、わらわらと人が出てきた。
このままここにいても暇をするだけだ、帰ろう。
そんなことを思って、校舎の外に出た。
その時だった。
突然の女性の悲鳴が聞こえたのと、周りの聴衆どもがザワザワと動き出したのは。
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