絶対に読んではいけない小説(Ver.Another)

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 プロの小説家ではない俺は、勿論本職もある。本職が忙しいと、中々書くことが出来ない。挙げ句、仕事の最中に妄想だけが膨らんでいくことすらある。そういう時に限って、面白そうなアイデアが浮かぶが、仕事の休憩時間になってメモに書き留めようとしても決まって思い出すことが出来ない。  頭の中に散らばってしまったアイデアの欠片を拾い集めて組み合わせてみるが、大切なピースがいくつか見当たらなくてちぐはぐな物が組み上がる。  他にも、帰宅の運転中とか、風呂で頭を洗っているときとか、どうしても手が離せないときに限って良いアイデアが浮かぶ物だ。そして、腰を落ち着けたところでそれらは風化してしまっている。  その度に俺は、他の人が書いた作品を読みに行ってしまうのだ。  俺と同じようにプロではない人がほとんどの筈だが、描写とかストーリーとか伏線の張り方とか、本当に素晴らしいと思わず唸ってしまう人達ばかりで、俺はどんどん自信を無くしていく。  いつしか読み専を気取って、定期的に更新される作品を読むことを日々の楽しみにしてしまっていた。  俺の夢に対する情熱の火は、消えてしまったようだ。
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