第八話 「復讐鬼」

20/20
281人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
「爺様、婆様……篤兄さん、私を忘れてるよ」 しじまが三人に歩みよる。 「すまん、しじま……この先、辛い思いをさせる可能性がある。怒っているか?」 「ううん、怒っていないよ…。私も頑張るよ、家族を支える」 四人の会話を相良、柴田、恭也と陣内は黙って聞いていた。 ふと、恭也が相良に向かって口を開く。 「姉貴……辛くないのかよ、こんな風になって」 「何だ、珍しく優しいな」 珍しく労る様な台詞を言う恭也に、相良は、いつもの微笑みを浮かべる。 恭也は、ムッとした表情になるが怒らなかった。 「まあ、全く辛くないと言えば、嘘になる。だが、イチイチ言葉にしていたら、探偵なんか勤まらないからな」 「……そうか、姉貴らしいよな」 恭也は、呟くと四人を眺める。 後味が悪く、悲しみを残した事件は終わったのだ。 それぞれの心に消えない傷と思いを残し、事件は静かに幕を閉じた。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!