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「爺様、婆様……篤兄さん、私を忘れてるよ」
しじまが三人に歩みよる。
「すまん、しじま……この先、辛い思いをさせる可能性がある。怒っているか?」
「ううん、怒っていないよ…。私も頑張るよ、家族を支える」
四人の会話を相良、柴田、恭也と陣内は黙って聞いていた。
ふと、恭也が相良に向かって口を開く。
「姉貴……辛くないのかよ、こんな風になって」
「何だ、珍しく優しいな」
珍しく労る様な台詞を言う恭也に、相良は、いつもの微笑みを浮かべる。
恭也は、ムッとした表情になるが怒らなかった。
「まあ、全く辛くないと言えば、嘘になる。だが、イチイチ言葉にしていたら、探偵なんか勤まらないからな」
「……そうか、姉貴らしいよな」
恭也は、呟くと四人を眺める。
後味が悪く、悲しみを残した事件は終わったのだ。
それぞれの心に消えない傷と思いを残し、事件は静かに幕を閉じた。
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