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「ねえ・・・堂島君、止めよ?止めよう?」
狭い洞窟内に澄恵の不安そうな声が響く。
「まあ、何が出てきても澄恵は俺が守ってやるから」
ほら、と堂島は澄恵の手を取る。
一瞬にして赤くなった澄恵に笑う堂島と、叫ぶもはや澄恵の公然のストーカーとなった閑。
今日は慶の保護者である椎に留守を頼んで皆で肝試しに出掛けている。
私、二宮は正直少しばかりこのようなイベントは苦手なのだが・・・これだけ喧しければ出るものも出ないだろう。
閑さんの叫び声が聞こえる。
ああ、今日も平和だ・・・。
ふと、こういう時真っ先に騒ぎだしそうな隣人の存在を思い出した。
流石慶、保護者を名乗る流石椎と共に都会から遠く離れたこの田舎にふらりと現れた人間である。
どうやって仕入れているのかは分からないが、かなり珍しい品から日常の便利用品まで幅広く扱っている商店を営んでいる二人組だ。
慶の方は普段はすこぶる煩く、明るい。
正し、いきなりスイッチを切ったように欝になるから要注意。
頭も中々に切れて、店の細部を細かい事は何もしない椎の代わりに引き受けているそうだ。
椎の方は・・・さっぱり分からない。
外見だけなら私達と同じぐらい。しかし私と同じ17歳の慶の保護者だという。
唯一分かっている事は慶を彼女の基準で異常に耽溺しているという事だ。
その慶は黙ったまま、ずっと足元を見ながら歩いている。
欝モードが入っているのだろう。
私は気にせず慶の横を歩き続ける事にした。
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