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道標(草薙紫燕)~シリアス&微ホラー~
僕には幽霊が見える。
霊感というやつだ。
目を開けると、部屋のあちこちには幽霊がいる。
そいつらは大体は僕に助けを乞うようにまとわりついてくる。
本当に助けて欲しいのは、僕だというのに。
少し高さが足りない机に宿題を置き、猫背気味になりながら僕は問題を解く。
中学に入ってから、僅か4ヶ月程度だが僕の身長は10センチも伸びた。
猫背のまま宿題を解くのはなかなかに辛いものである。
顔を上げると目の前には透けた顔がある。
鬱陶しいと感じた僕は、手にしていたシャーペンでその顔を切り裂いた。
と言っても、実際は存在しないものだから、それは少し顔をしかめただけで直ぐに元に戻る。
――それでいいんだ。
僕は少し安堵した。
変な話だが、生まれつき当たり前にあるものがいきなり無くなる方が不安なのだ。
それは真っ暗な海の上で灯台を見失った気分かもしれない。
なんの道標もない絶望感、僕は9年前にその感覚を味わったことがある。
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