練習場2

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続いている雨音が不思議なぐらい、嵐が去ったように静かになった 漂うアルスの魔力の気配だけが、落ち着かない 徐々に無くなっていくその気配に安堵するが、この霧散の遅さも、本来、魔力線3秒のアルスができる密度じゃない どうしようもなく、落ち着かなかった アルスが、魔力を練れなくなったなら― リジェイ先生の足が治らなかったら― そう思うと、背中が冷えた アルスに、『破水』を発動できるだけの魔力コントロールがないのは分かっていた だが、俺は、それを知りつつ、アルスにロッドを持たせたのだ それに見合わなければ、発動自体できないと、判断したから そう、安易に考えた 魔術陣とは、そういうものだからだ 全く、疑いもしなかった 魔術は怖いものだと、知っていたのに、なぜ慎重にならなかったんだろう アルスの状態は、今まで感知したことのない違和感しかなかったのに 魔力暴走は、本来ない力、実力以上の魔力変化を起こそうとした時に、魔力変化を自身のコントロール下に置けなくなることでおこる現象だ ロッドに発動規模は指定されていた たとえそれが、三重だとしてもだ だが、それは魔力の凝縮という形で、使用限界値を突破して発動された そして、『水棘』、『氷柱』ともにアルスが持つ使用限界値以上の魔力変化だった 一体、何が起こったのか、整理ができない 本当に、魔力暴走による、魔力の増加だけだったのか? あの急激な魔力の増加には、他に理由があるんじゃないのか? でなければ、説明がつかない 保有と違って、使用は、扱える魔力の最大値、これは魔力コントロールの修練によって、伸びていくものだ だから、4日前の魔力測定より増えていてもおかしくはない だが、急激な増加はありえない いや、ありえないからこそ、魔力暴走を起こした そう考えるのが、普通だ 自身のコントロール下に置けない魔力の使用に、制御できず魔術を発動した結果、思いもよらない発動を引き起し、それを止められない魔力使用状態に陥ることを魔力暴走と呼ぶ だが、それなら、水棘の発動範囲に違和感を感じる 明らかに俺の動きに反応し、攻撃意思のある動きだった それはリジェイ先生に向けられた攻撃を考えても当てはまる 魔力暴走ならば、発動範囲やタイミングは操作できないはずだ
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