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続いている雨音が不思議なぐらい、嵐が去ったように静かになった
漂うアルスの魔力の気配だけが、落ち着かない
徐々に無くなっていくその気配に安堵するが、この霧散の遅さも、本来、魔力線3秒のアルスができる密度じゃない
どうしようもなく、落ち着かなかった
アルスが、魔力を練れなくなったなら―
リジェイ先生の足が治らなかったら―
そう思うと、背中が冷えた
アルスに、『破水』を発動できるだけの魔力コントロールがないのは分かっていた
だが、俺は、それを知りつつ、アルスにロッドを持たせたのだ
それに見合わなければ、発動自体できないと、判断したから
そう、安易に考えた
魔術陣とは、そういうものだからだ
全く、疑いもしなかった
魔術は怖いものだと、知っていたのに、なぜ慎重にならなかったんだろう
アルスの状態は、今まで感知したことのない違和感しかなかったのに
魔力暴走は、本来ない力、実力以上の魔力変化を起こそうとした時に、魔力変化を自身のコントロール下に置けなくなることでおこる現象だ
ロッドに発動規模は指定されていた
たとえそれが、三重だとしてもだ
だが、それは魔力の凝縮という形で、使用限界値を突破して発動された
そして、『水棘』、『氷柱』ともにアルスが持つ使用限界値以上の魔力変化だった
一体、何が起こったのか、整理ができない
本当に、魔力暴走による、魔力の増加だけだったのか?
あの急激な魔力の増加には、他に理由があるんじゃないのか?
でなければ、説明がつかない
保有と違って、使用は、扱える魔力の最大値、これは魔力コントロールの修練によって、伸びていくものだ
だから、4日前の魔力測定より増えていてもおかしくはない
だが、急激な増加はありえない
いや、ありえないからこそ、魔力暴走を起こした
そう考えるのが、普通だ
自身のコントロール下に置けない魔力の使用に、制御できず魔術を発動した結果、思いもよらない発動を引き起し、それを止められない魔力使用状態に陥ることを魔力暴走と呼ぶ
だが、それなら、水棘の発動範囲に違和感を感じる
明らかに俺の動きに反応し、攻撃意思のある動きだった
それはリジェイ先生に向けられた攻撃を考えても当てはまる
魔力暴走ならば、発動範囲やタイミングは操作できないはずだ
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