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アルスの意識は途中で飛んでいた
意識の範囲外でならば、魔力暴走の方が当てはまる
それとも、潜在的な力から突発的に魔力を生み出したとでもいうのか？
憶測でしかない
だが、信じがたいが、目の前で起こったことは事実なのだ
薄まっていく、アルスの魔力を感知して、大きく息を吐いた
疲れた
疲労がどっと、身体に重くのしかかる
ポケットに入れた、アルスの結晶器を右手に取る
周囲に誰も居ないこと、守護障壁が発動されているのを確認してから
その結晶器に魔力を込める
俺は、浸透路にも、魔術式にも詳しくはない
だが、このロッドにどのようなものが組み込まれているのかが、気になった
魔力を込めて、エンズリー先生とアルスの同調を思い出し、結晶器の浸透路に同調してロッドを形成する
エンズリー先生は分からずとも、アルスの魔力は同調でよくわかっているから、問題はない
本来ならば、本人か職人しか形成できないそれを、形成させる
あんなにも綺麗に輝いていた水色の切っ先も、雨雲のせいか濁って見える
『破水』の魔力の流れをイメージして、その魔術式を探る
そして、そのまま『破水』を守護障壁に向けて発動した
水の塊が、雨粒を弾きながら、守護障壁にぶつかり、消滅した
魔力が少なくとも、多くとも、ロッドに問題はなさそうだ
エンズリー先生は、このロッドの発動規模の限界値は、浸透率の限界値だと言った
ロッドに亀裂が入るならば、その限界値を越えたということになる
「なんなんだよっ」
このロッドのせいでこんな事態が起きたかと思うと、思わず右手を振り上げた
夕焼けに嬉しそうにこれを眺めるアルスの表情を思い出して、投げ捨てようとしたその手を止める
責任転嫁もいいところだ
このロッドに問題がないと今確認したばかりなのに
むしろ、発動規模に上限があったからこそ、破水の被害があれだけで済んだともいえる
ロッドの形成を解いて、結晶器の状態に戻す
一体、何がいけなかったんだろうか
こんなことになるなんて思いもよらなかった
魔力の気配が近づいてくるのを感知して、フェンスの方へと視線を向ければ
ルナエラ先生がフェンスを飛び越えて入ってきた
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