78人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
2009年03月
「沖田まだ出ないのか?窓閉めと電気、頼むぞ」
「はいよ」
放課後の教室。
皆は部活に行くなり帰るなりしてしまい、教室に残っているのは彼1人だ。
窓際に椅子を置き、窓のレール手前の僅かな段差で頬杖をしてボケーっと外を眺めている。
彼は沖田誠二、来月から高3で進路についてでも悩んでいるのだろうか。
すると突然、教室のドアが開き思わず沖田は振り返った。
そこには女子が1人立っていた。
「沖田君まだ居たの~?部活は?」
「……何だ小野寺か。今日はオフですけど、何か?」
「あ、そうなの?それは失礼。何してんの?進路についてでも悩んでるのかな?」
彼女は小野寺美紀。
沖田の隣のクラスだ。
2人の関係?
別に特別なものではない。
1年の時にクラスが同じで、席が近かったから仲良くなったというだけのものだ。
「いや、別に……。つーかお前こそ部活じゃねぇのかよ」
「今から行く~。じゃあ沖田君は卒業したら何するの?」
「……俺は自衛隊に、海自の航空学生受けようと思う」
「へぇ~!イイじゃん、似合ってるよ!って事は戦闘機に乗るの?」
「バーカ。海自は空母も持ってねぇのに戦闘機なんかある訳ねぇだろ。哨戒機かヘリとかだよ。お前は?」
「私はまだ決まってないよ」
彼女は笑いながら言う。
「いいのかよそんなお気楽で。さてと、じゃあ俺帰るから、向こうの窓閉めてくんね?」
「りょーかい!!」
彼女は敬礼してみせる。
自転車で駅に着きホームまで行く途中で、彼は駅の掲示板に「自衛官募集」のポスターを見付けた。
「……平和を仕事にする……か……」
最初のコメントを投稿しよう!