一寸先は闇かもしれない

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シンの部屋に一歩入る。 すごい久し振りだ。 高2の夏、ベランダを乗り越えて(シンにいきなり抱き上げられて!)この部屋に入った時以来。 あの時と変わりない… いや、あの時よりさらに閑散としてるような。 本棚を見ていると、ふと、シンがすぐ近くに来ていることに気付いた。 「何を貸し…」 言いかけた右手を引かれる。 片手であたしの手首を掴んだまま、片手が背中に回って。 ぐっと引き寄せられる。 この瞬間に、世界がぐるんと回る感覚がある。 波に呑まれるような。 いつも、怖くて、ドキドキして。 切なくて。 大事に握っていた風船を手放した時のような。 唇が重なる。
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