8.破壊の果てに

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「ハア……ハア……」 右腕を押さえながら、荒々しく呼吸する。 少々無理な『肉体強化』をしてしまった故か、肉も骨も痺れるように痛い。 (やっぱ調節が難しいな、神力って……) そんなことを考えながら、大の字になって伸びる大男へ歩み寄る。 傷口は八割ほど塞がっているが、鱗や甲殻に再生した様子は見られない。もう体力的に限界のようだ。 「……ッ、カハッ……」 野性味を失った咳と共に、真紅の血が吹き出る。 鎧のごとき鱗を半ば失った顔は、左目に古傷を抱える、いかめしい仏頂面に戻っていた。 双眸に宿る光は、ぼんやりとしていて弱々しい。 何と声をかけようか、思案したのも束の間。 「……弱い」 仙人のような威厳に溢れる声が、シグマの唇の端からこぼれ落ちた。 「今も昔も、守りたいだけだというのに……守れるだけの強さすら、私にはない……」 瞳も声も、深く暗い悲しみに満たされていく。 「私は、どこまで……どこまで弱いというのだ……?」 「……」 あんたが弱いなら、オレはどうなんだよ。 ……なんて軽口を叩く気は起きなかった。胸がキリキリと締めつけられる。
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