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「…聞いてみようかな?」
私は奥で文献を見ている鈴原先生に近付いた。
「あの…鈴原先生?」
「はい?」
「あのウィルスは…どこで…採取したものなんですか?」
「………」
「このウィルス、新種だから何を食べるのかもわからないんですよね?でもこうして何ヶ月も生きているのが気になって…」
「…そうね…立山先生には知る権利はありますね…わかりました、今夜この子のご飯を取りにいくので夜になったらこちらにきてください。」
鈴原先生はメモ用紙に何か書き、私に手渡した。
「この病院の外にあった門があるでしょう?あちらで待ってますわ…」
鈴原先生はそう言い残し、文献を整理して、研究室を出ていった。手渡されたメモ用紙には何かの言語のようなものが書かれているのだが、解読ができなかった…
その夜、私は鈴原先生と合流するために病院の外に向かっていた…ふと病室の明かりが漏れている部屋があった。
「ここは…砂々ちゃんの病室よね…?」
私は少しだけあいていた砂々ちゃんの病室を覗き込んだ、砂々ちゃんはヌイグルミを抱きしめ、じっと窓の景色を見つめていた。それは鑑賞している雰囲気ではなく一点を見つめ、何かに怯えているような感じがした、その証拠として小さい体が小刻みに震え、抱きしめているヌイグルミに力が入っていた……
「……どうしたのかしら?」
私は彼女が気になり、病室に入る事にした。「砂々ちゃん…?」
私の声にビクッと体を震わせ、砂々ちゃんは振り向いた。
「立山…先生?」
突然砂々ちゃんは私に抱きついてきた。
「…どうしたの?…ずっと窓の外を見ていたみたいだけど…何か怖いものでも見たの?」私は砂々ちゃんの頭を撫で、優しく抱きしめた。
「外から…変な音が聞こえたんです…何かが飛んでるような…」
「…そう。」
恐らくは蝙蝠や昆虫の音か何かだろう、これだけ山奥にある病院だし…そういうのが飛んでても何ら不思議は無い、それにまだ小学生だもの、たった一人でこの大きな病室にいれば心細くもなる。
「大丈夫、心配ないわ…そうだ…砂々ちゃんが眠るまでそばにいてあげる。」
「…本当…?」
「もちろん、さぁベッドにいきましょう。」
砂々ちゃんはそう言うとベッドに向かっていった。
今はあまり時間もないのだが…砂々ちゃんを安心させないと、ゆっくり眠る事もできないだろう、私は鈴原先生に少し遅れるというメールを送ったあと、砂々ちゃんのベッドの隣に座った。
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