第四章【執着】

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すぐに鍵屋さんが来て、我が家のカギは身分を証明しメーカーに取り寄せをしないとスペアキーが作れない頑丈な鍵に変わった。 その鍵はお母さんと私が持つことになり、足りない分のお父さんのカギは、早速取り寄せになった。 そして、お父さんが明日帰るからと、今夜は気分だけでも明るくしようとご馳走だ。 どうしてもと、お父さんが聡を引き止め、聡も一緒に食卓を囲む。 「本当にすみません。 僕まで図々しくご馳走になって。 しかもこんな豪華な料理…」 「黒部君は1人っ子なのかい?」 「はい。小さい頃から両親はクリニックを開業してましたから、いつも食事は1人でした。 それは今もなんですけど…。 でも、1人でも危なくないようにと護身術も習わせてもらったし、僕のやりたいことは全てやらせてもらってます。 だから、こうして家族団欒っていうのが経験ないんですよね」 「うちも葉月に何か習い事をさせれば良かったわね」 「したじゃない。ピアノ」 「でも3ヵ月で止めたでしょ?」 「葉月はすぐに諦めちゃうんだ。 自分の限界を自分で決めるっていうのかな…。 そのくせ、色んなことに興味は持つんだけどな」 「もう!! お父さんもお母さんも、聡の前でそんな話ししなくて良いでしょ?」 私は頬を膨らませた。
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