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「でも…優しい娘さんですよ…。
本当に。だから愛情に飢えていた純には葉月ちゃんしか居なかったんだと思います。
純にとっては、葉月ちゃんが宝だった。
でも…愛され方を知らないんです。
だから愛し方も知らない…。
それで、あんな形でしか葉月ちゃんを引き止めておくことが思いつかなかったんでしょうね…」
「まぁ…その話しはもうやめよう」
お父さんは聡を止めた。
「私は聞きたいな…」
聡はまた話しだす。
「確かにアイツは加害者で、今でもどこかで葉月さんを狙っているかもしれません。
でも、アイツ自身が被害者でもあるんです。
一番心に影響を受けやすい思春期に父親から暴力を受けて、母親に守ってもらえないどころか捨てられて…。
だから許して下さいって言ってるんじゃないんです。
俺は必ずアイツを捕まえて、罪を償わせます。
そして、葉月さんの心の傷もきっと埋めてみせます」
「頼んだよ…黒部君」
「はい」
聡が将来の精神科医として言っているのか、黒部 聡として言っているのかわからない…。
ただ…聡が居てくれたら、恐怖からもいつかは抜け出せるような…そんな気がした。
すぐに、それが甘い考えなんだって気付くことになるなんて、全く予想もしていなかったけど…。
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