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表の模様は、トランプによくある幾何学模様のような柄。色は赤。
裏返してみると、スペードのエースだった。
カードの真ん中に、大きくスペードのマークが描いてある。
そういえば、どうしてトランプってスペードのエースだけ模様が複雑なんだろう。
そんなことを考えながら、スペードのマークに触れたその時。
「うわっ!?」
急に足元から渦を巻くように強い風が吹いてきて、思わず目を瞑ってしまう。
耳元でヒュウヒュウと風の音がうるさい。
しばらくして、ぴたりと風の音が止んだ。
そっと目を開けてみる。
あんなに強い風が吹き荒れていたのに、部屋の中は何一つ変わっていなかった。
……いや、ひとつだけ大きな変化があった。
いつの間にか、俺の目の前に白い髪の人物が立っていた。
その人物は、俺の方をじっと見つめて微笑んだまま動かない。
誰だ?
不審者か?
白い髪だし、外人?
外人なら日本語は通じない?
目も赤いし、何かのコスプレか?
いや、それよりもどこから入って来たんだ!?
人間はパニックになると、正常な思考や言動が出来なくなるという。
俺はわりと冷静な方だから、そんなことはないと思っていた。
でも今の俺は、完全なパニック状態だった。
「は、はじめまして…こんにちは……?」
握手のつもりで、右手を差し出した。
いやいや、他に言うことあるだろう。
何をやってるんだ、俺は……。
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