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目の前の男は、少し驚いたような顔をしたが、俺から離れようとはしなかった。
むしろ、キラキラした瞳を細くして更に爽やかな笑顔を向けてくる。
何なんだコイツ……。そろそろ警察案件か?
俺が一歩後ろに下がると、二歩間合いを詰められる。
その間も、男は俺に向かって話し掛けてきた。
「アリスはもう忘れてしまっているのかもしれないね。
無理もないよ。あの時の君は幼かったし、1度しか会っていないから」
こんな白い髪の人間、1度会ったら忘れるわけないだろう。
「そ、それ人違いじゃないのか?」
「違わないさ。確かに君は僕のアリスだよ」
辛うじて口に出した反論も、あっさりと否定される。
今さらっと『僕のアリス』っつったな。
振り払ったはずの手は、いつの間にかまた俺の手を握っている。振りほどこうにもびくとも動かない。
コイツ、思ったより力が強いぞ!?
そして、気が付けば俺は壁際まで追い詰められていた。
爽やか笑顔の白髪イケメンに壁際に追い詰められて手を握られている俺。
……何だこの状況。
ここで無理矢理にでも自分のペースに持っていかないと、何かまずいことになりそうな気がする。
それに相手の目的がわからない以上、下手に抵抗すると危険な目に遭うかもしれない。
少なくとも日本語は通じるみたいだし、向こうは俺を一方的に知っているようだ。
なら、今出来る最善は。
「なぁ」
「なに?どうしたの?」
少し首をかしげるように俺の目を覗き込む。
俺より身長高いの何か腹立つなぁ……。
「さっきから俺のことアリスとか呼んでるけど、俺の名前は有人だ。
それに話が全く見えないし、お前まだ俺の最初の質問に答えてないよな?」
あくまでも、冷静に。
平静を装って相手の情報を引き出す。
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