思い出探し

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優しくて残酷な人を 好きになった。 ねぇ? 高望みなんてしないから ただもう一度だけ "実紗子"じゃなくて "千明"って呼んで 抱きしめて欲しいの。 ・・・・・ 「実紗子?どうしたの?ボーっとして、水出しっぱなしだよ、」 「あっ、本当。」 「俺もさ、食器洗い手伝うよ、実紗子ドジだから皿割りそうだし。2人でやれば早いだろ?」 そう言って隆弘は洗い物をすすめる。隆弘のそうゆう優しさが、あたしは大好きで、 「ありがとう、ん?てか、あたしドジじゃないし、」 「いや、ドジだよ。高校の時に学校の顕微鏡落として壊したじゃんっ」 ・・・・? そんな事知らないよ、 だってそれは 実紗子さんとの思い出でしょう? 実紗子さんと あたしを間違える 残酷なあなたが 大嫌いで どうしようもない 虚無感があたしを襲うの、 「えっ?実紗子どうしたの?なんで泣いてるの?」 こんな時でも やっぱり実紗子って呼ぶのね、 あたしは千明だよ、 だけど あたしより実紗子さんを 愛してる事を知ってしまった今、それを言う勇気なんてなくて 「泣くなよ、」 って優しくあたしの涙を拭う あなたは失いたくないから、 だって本当の事を知ったら 優しくて残酷なあなたは簡単にあたしの事を捨てるでしょう? だけど、やっぱり 苦しくて痛くて その重みに耐えれるほど 強くないから 泣いてしまう、 でもただ傍にいたいから あたしはまた実紗子になる、 「なんでもないよ、隆弘。」 「辛い事があったら俺にすぐ言えよ。」 そう言って隆弘は あたしを抱きしめる。 隆弘の腕の中で 1ヶ月前までの 千明(あたし)が愛された日々を 反芻する。 本当に あの頃に戻りたい、 「実紗子、愛してるよ」 思い出探し、 独りよがりなあたしの思い。
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