落ちた

2/2
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「アリス!!大丈夫!?」 アリスが目を覚ますと、泣き腫らした母の顔が真っ先に飛び込んできた。 彼女はアリスの驚いた顔を見ると、安心したようにため息をついた。 「よかった、ママね、あなたが屋上から落ちたって聞いてもう本当に…死んでしまったんじゃないかって… お医者さまにも助かる確率は低いって言われて不安だったの…ああ、アリス!!」 アリスにはわけが分からなかった。 何故母が泣いているのかも、体中が痛むのも、ついでに後ろの医者まで泣いているのも。 「本当にきみは運がよかった。一歩間違えれば、きみは死んでいた。」 その医者が馴れ馴れしくアリスの肩に触れた。虫酸が走る。 「あの、あの私は何かしたんですか?」 「え!?」 母が彼女の目を見つめた。 「あなた、何が起こったかわかんないの?」 「うん。母さんが泣いてるのもわかんない」 医者がか弱く微笑む。 「きみは屋上から落ちたんだ」 アリスは瞬いた。 「え、私が?どこから?」 もう一度医者は微笑んだ。 次はニッコリと。 「君が覚えていないなら、自殺ではなさそうだね。よかった。安心した。」 「学校の屋上から落ちたのよ。6階から真っ逆さま」 「・・・ええー!?私!!ど、どうりで体中が・・・痛っ」 母は、元気そうなアリスを見て安心した。 「では先生、一応退院してもいいんですね」 「ええ、自殺ではないと分かれば、二度と起こさないでしょうし、彼女は体が強かったのでヒビ一つ入っていません。 しかし体中に傷がつき、少ししみると思います。 下が木だったから傷だけで助かったものの、本当に危なかったですぞ」 アリスにはまだ何も飲み込めていなかった。  
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!