序章 不思議な力と転校生

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また聞こえた。 好奇心と言うか、猫が見たいというか、なんとなく探してしまう。 不思議と泣き声は上から聞こえてくるので、屋根上や木の上なんかを隈無く見てみる。 ……いた。灰色の若い猫が既に葉だけになった桜の木の上でぶるぶると震えていた。そして、今にも折れてしまいそうなか弱い声で救援を求めている。どうやら降りられなくなったらしい。 しかし、木の上にいる猫を助けるのはなかなかの困難である。私の身長の倍以上の高さに猫はいるのだ。 身長が158センチしかないという揺るぎない事実がより一層悔しく感じる。 ――うーん、あそこまで行けるかな? 手に持っていた黒い鞄をその場に置くと、少女は木に足を掛けてよじ登り始めた。手足をゆっくりと伸ばしていき、徐々に上に進んでいく。大変ゆっくりと。 それから、かなりの時間が流れた頃、 ――あと、もう少し……。 手を伸ばせば指が届くところまで登った。 さらにもう一度足を進める。ここなら手は届く。猫は怯えた目でこちらを見つめた。 じりじりと猫に接近していき、なんとか猫を抱き上げる事に成功した。レスキュー隊はきっと、こんな気分なのだろう。
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