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「其の者を捕らえろッ!」
あまりの怒りにより顔を歪ませ、玉座より立ち上がった王の激を受け、直ぐ様脇に控えていたであろう長槍を構えた近衛兵が2人現れた。
「かハッ!!……お、お待ちください、陛、下……」
両側から近衛兵の攻撃を受け、一撃にして左右の肩甲骨を破砕され床に叩き付けられて尚、その男は激痛に顔を滲ませながらも、遥か先に聳える玉座に向けて顔を挙げる。
歳は40代前半ぐらいだろうか、王に謁見するのだから勿論帯刀などしているはずがない、だが其れ以前に、この男の筋肉量は明らかに武闘家のそれではない。
かといって、魔導を封じる呪詛が刻まれた腕輪をしていないので、この男が魔導師と言うわけでもない。
また、この男は商権を取り付けにきた商人でもなければ、旅芸人でもない。況してや、賊の類いでもない。
では何者か?
一言で顕すなら、この男は錬金術師と呼ばれる者である。
尤も、魔導技術が世間一般に定着化している左近、錬金術師為る者などこの国はおろかガナード中捜しても草々見付かりはしないだろう。
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