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ガコン!…
「…相変わらずうるさいわね此処は…」
エルザは両手で扉を押しながら開くと、賑やかな店の中の様子を見てそう呟いた。
此処の酒場は、少し前には一般人も入っているのが見えてたのだがいつの間にか同業者達の溜まり場と化してしまい、今はこの様にほぼハンター専用のパブとなってしまっている…
まぁ、その方が店側としては儲かるからいいのだろうが…
「さて、仕事はあるかしらね?」
「お、おい!ちょっと待てって!…」
エルザは馴れた様子で人込みの中を縫ってカウンターの方に向かって行った。
俺も急いで後を追うが荷物が邪魔して思う様に進めない…
ガチャッ!!
「うぉっ!…オイ!気をつけろ!」
途中で荷物が側にいた男の背中に当たり、彼が手に持っていたビールが服に掛かってしまった。
「うぁっ!すいません!……って…アレックス!?」
「おっ?何だお前か!」
俺が謝った後、顔を上に上げて顔を見て目の前の男がアレックスだと気付いた。
「どうした?今日はエルザと大事なデートの約束があっただろ?」
アレックスは胸元に酒が付いた服を摘みながらそう聞いて来た…
「いや…一応、約束は果たしてるんだが…あいつが明日の仕事を見たいって言い出して…」
「ったく…お前も大変だな…おまけにその荷物…ははぁ…あいつのだな?」
彼は紙袋から覗いてる酒瓶を見るとニヤリと笑いながらそう言った。
「…まぁな……」
俺は片手で頭を掻きながらそう呟いた…
「そういえば、あいつに何を買ってやったんだ?」
「……あいつらしい物だよ…」
「は?あいつらしい?…」
俺の言葉を聞いて、アレックスは頭を?で一杯にしてそう言った。
「…まぁ、後で分かるさ。…それより、俺はカウンターに行かなきゃならないから」
「あ、おい待てよ!仕事の事なら俺も行か……あぁ~…そうだよな。デート中だもんな…」
「……あのな…」
俺が話そうとする前に近のテーブルに座っている数人の人達の声がアレックスの名を呼んだ。
「おっといけね、ポーカーの途中だったんだ…
仕事が決まったらこっちに来てくれよ!」
「え?…ああ、分かった…」
俺がそう反応すると、あいつは酒を片手に急いで戻って行った……が…
「酒新しく注ぐのを忘れてたわ…」
そう言って、カウンター隣の酒樽の方に小走りで向かって行った…
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