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見知らぬ犬
「素敵なロケットだね。」
ねこの上から声がした。上を見上げると、木の上から見知らぬイヌが見下げていた。
「大切なものなんだね」
「なんで分かるんだい?」
「なんでって、さっきからそのロケットを大切そうに握ってるからさ」
ねこは驚いた。自分が無意識のうちにロケットを握りしめている事を、知られていたからだ。
「大切なものだって当てたご褒美に、見せておくれよ。」
ねこはしょうがなく見せた。イヌはロケットから出てきた羽を興味深そうに見つめた。
「小鳥の羽かい?」
ねこはこくりと頷いた
「だから大切だったんだね。僕はそのロケット、素敵だと思うな。」
「え!?」
ねこはもう一度驚いた。イヌの言葉は優しく胸に染みた。
「ねこ君、君は辛いかい?その生き物が死んでしまって、寂しいかい?」
「こんなに、こんなに寂しくなるなら、小鳥なんかに出会わなければ良かったさ!!一人にされるのは僕だって分かってるのに、責任が持てないんなら出会わなければ良かった・・・!!」
「違うよ」
イヌは微笑み、首を左右に振った。
「君の小鳥は幸せだったんだろうな。死んだあとも、君にまだ愛されてるじゃないか。」
「でも小鳥は戻ってこない!!」
「最初からどこにも行ってないよ。」
ねこは涙でいっぱいの目を大きく見開いた。
「そのロケットと、君のここにいるだろ」
そういって、ねこの胸を指した。ねこはキョトンとしている。
「形あるものは、いつか壊れ、無くなってしまう。しかし、形があったことは無くならないだろう?それは君の胸の中に。」
ねこは小鳥が死んだ後、始めて微笑んだ。
「それじゃあ僕は旅にでるよ・・・」
そのときだった。彼の手の中にロケットが見えた。
「ちょっと待って!!僕も君と旅に出たい!!」
ねこはイヌのあとを追いかけた。イヌの胸にある、形あったものの話を聞かせてもらうために・・・
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