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ケイはいつもの生活に戻っていた。
あの丘に行き、ナオキの事を思い出す。
前と全く同じ生活。
ただ一つを除いては…
それはあやこの存在だった。
(あやこ「また会えますか?」)
その言葉ばかりがケイの頭の中を駆け巡る。
ケイ「クソッ。なんだってんだ。…俺は今も、これからも独り。俺は独りでいなきゃいけないんだ。俺と関わると…。…忘れよう。もう二度とあんな思いはしたくない…。」
ケイは自分に言い聞かせる様に強い口調で言い放った。
ケイは怖かったのだ。
大切なものを失う怖さを…。
(「…ケイ。俺の分までダチ作れよな」
「…お前は沢山のダチに囲まれてる方が似合ってるぜ」
「…約束だぞ」)
ケイ「…ハハッ。ゴメン。俺、お前との約束守れそうもないや…。」
ケイの心はボロボロになっていた。
それからケイの生活はメチャクチャだった。
何も喋らず、ほとんど食べず、寝る事さえも満足に出来ないでいた。
どしゃぶりの雨の日、傘もささず丘の上にたたずんでいる少年がいた。
…それはケイだった。
バタッ
医者「…気がついたみたいだね。」
気がつくとそこは病院だった。
ケイ「…帰ります。」
そう言うとベットから降りようとした。
ガシャン!!
ケイはまともに歩く事さえも出来なかった。
医者「極度の栄養失調だね。ひどい風邪をこじらせてるみたいだからこのままだと麻疹にかかってしまうかもしれない。しばらく入院して様子を見ましょう。」
ケイ「…」
ケイは無言でベットに入った。
ケイ「…また箱の中に戻ってきちゃったな…。」
天井を見つめ、じっとしている。
それからケイはしばらく療養生活を送っていた。
熱もひき、なんとか歩ける様になるまで回復した。
ケイ「…空でも見に行くか。」
そうつぶやくとケイは屋上に向かった。
空を見に行くのではなく…
あやこに会いに…
キィ~
古い鉄の扉を開けた。
この音がケイにはひどく懐かしく思えた。
ケイの鼓動が少し早くなる。
…そこにあやこはいなかった。
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