第零章 猫は炬燵で夢を見る

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夜中、トイレに起きると両親が言い争いをしてたら、それは子供にとっても不安なことだろ? あまつさえ、その原因が自分だった日にゃ罪悪感は半端ないわけよ。 おまけに、なんか俺、要らない子みたいにお袋に言われててさ、親父もしょうがないだろ! て感じでフォローもないわけさ。 ええ、ええ、ショックでしたとも。 だから俺ね、決めたんですよ。 家を出よう。 小学校を卒業したら、世間に出て働こうってね。 無邪気なもんでしょ? 中学校の存在なんて知らなかったんだもんさ。 俺当時小1よ? 小1で親に要らない宣言されてさ、泣く前に一人立ちの決意ですよ? 健気だねぇ~。 まぁ、結局家は出たんだけどね。 中学生から独り暮らし。 んでさ、俺その頃から生きる指標にしてるものがあんだけどさ、知りたい? それはさ、猫なのよ、猫。 あれね。 毛がふさふさで、ニャーって鳴くあれ。 いいよね、猫。 なんたって自由だし。 縄張りの中を人間などそ知らぬ顔で闊歩して、己の食いたい獲物を狙い、己の誇りのために力を振るう。 カッコいいよねぇ。 だからさ、俺は猫のように生きたいと、そう願ったわけさ。 親に、少なくともそう信じてた二人に、事実上捨てられていたことに気づいたあの日に。
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