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「お前何だかんだいって自惚れてるだろ?美月が結婚しないのは自分を待っているからだって。……甘いんだよ、美月だって今年で31だぞ?」
優弥の言葉が痛いところをつき、俺の弱った心に追い打ちをかける。
「そんな事、言われなくても分かってる……」
間違っても美月が俺なんかを待って結婚をしないなんて思ってはいない。
でも、ほんの少し期待していた部分はあった。
「ならいいんだ」
俺の答えを聞くと、どこかすっきりとした顔で、いつもの少しおどけた笑みを見せた。
そして「またな」と言い残すようにドアの方に足を進めドアに手をかける。
結局俺は知りたい事は何一つ知る事もできず、残ったのは胸のモヤモヤだけ。
「あ!この店な、美月に教えてもらったんだよ」
振り向くことなく思い出したように言うと俺が聞き返す間もなく、そのまま店を出ていってしまった。
「やっぱり奴と関わるとロクなことがない」
久しぶりに近くに感じた美月の存在に心踊ったが、同時に自分の不甲斐なさを痛感させられてしまった。
優弥はワザと俺に美月の影をチラつかせ、反応を楽しんだのだ―――優弥は昔からそういう奴だ。
やっぱり夢を見た日は何か起こるな、って思いながら俺はややほったらかしにしてしまった客に謝り、仕事に戻った。
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