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空腹の空き地
おれはいま、道の真ん中に立っている。
右も左も人間がつくった建物。
どれもこれも、おれには関係のない建物。
おれは、おれに必要な建物向かって歩いているはずだった。
だが、無いのだ。
おれの家、おれが働く会社、おれが好きな店。
おれに関する、おれに必要な建物が何一つ無いのだ。
おれの右にある家。
おれの名前とは違う、表札が付いた家。
ここは違う。
おれの左にあるビル。
見たことのない、高層ビル。
ここも違う。
ここをおれは知らない。
見たことが無い場所。
おれは歩き始めた。
左の建物の列が途切れた。
小さな空き地のようだ。
おれは吸い込まれるように、空き地に足を踏み入れた。
その瞬間、空き地はおれを飲み込んで、跡形もなく消えた。
建物の列は、途切れず永遠に続いていた。
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