濁った魚の目

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「いじめは悪い。しかし、いじめられる方にも何か悪いことがあるんじゃないのか?」 先生の口から出てきた言葉に、僕は呆れるしかなかった。 彼はリサ。 『女の子みたいな名前だろ。でもちゃんとした男なんだよ。』 リサは小学5年生。5年生といえば、やんちゃで楽しい盛り。毎日友達と遊んで、女の子に告白してみたり、少し危ないことをしてみたり でも、リサのまわりにはいつも友達が見当たらなかった。 何故? 答えは簡単。 いじめられっ子だから。 理由は? 答えは簡単。 名前が女の子みたいだから。 リサ自身、この名前は女の子のものだから、少し嫌だとは思っていたが、死んだ父が付けてくれた名前らしく、それはそれは大切にしていた。 何故か子供は、人と違うことは嫌がる。他人の違うものを見つければすぐさま飛びついて、からかう。 リサは昔から父がいないため、しっかり者でみんなより少しだけ大人だったから、違う点は個性として捉え、尊重した。 「先生、僕に名前を変えろっていうんですか」 「いや、そうじゃなくてだな、お前はおとなしいからもっと子供らしくだな…そうだ、人と合わせておけ。」 「…え?」 「意見、服装に言葉遣い。それと、趣味とかも合わせろ」 なんで僕が指図されなければならないんだ?普通に生活しちゃいけないって事? 「こればっかりは、先生は顔を突っ込んではいけないんだ。自分で解決する事も、大人になる第一歩だ。」 大人になれとか子供になれとかこのジジィは矛盾だらけ… リサは、彼の濁った深海のような青黒い目が苦手だ。見つめれば、自分が吸い込まれてしまいそうになるからだ。 リサはフィと彼から目を逸らした。 「おい、リサ。まだ話は終わっていないぞ。おい!待て!!」 先生の言葉にも耳を向けず、先生の前から立ち去ろうとする。その時、先生が叫んだ。 「だからお前はいじめられるんだ!!お前はこれからもいじめられつづければいいんだよ!」 「…え?」 職員室はざわつきはじめた。
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