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ランの言葉に、その場に集った鋼の乙女達は、ただ押し黙る。
「一番お辛いのは、ルリさん自身だと思います。私はあの場の判断としては、最善だった筈だと思っています。」
ランの言葉には確かな説得力がある。
間違いなく、レイジをあのまま連れて帰ればその後にどんな処罰が下るのかは、全員がある程度予想出来ていた。
あえて考えないようにしていたか。
あるいは、それは救出が終わってから考えることだと、そう思っていたのか。
「ラン、ありがとうございます。」
ランの言葉を聞き終えたルリは、静かに礼の言葉を紡ぐ。
「レイジは私にとって、連合国にとっても大切な存在だと思っています。ですが、上層部にとって私たちは戦いの道具です。弁護の機会が確実にあるとは言い難いからこそ、ああするしかありませんでした。全ては私の責任ですから、貴女はお気になさらないでください。」
「いいえ、私の方こそ、そこまでの考えに至れなかったのですから、お互い様ということで。」
ランとルリの二人のやり取りを聞き、クレアやネコ、マーリンもようやく納得する。
「成る程な。確かにあたしもそこまでは考えてなかったな。レイジを助けるってことは、ただ取り返すだけじゃなかったんだよな。」
「にゃー。確かにそれだけじゃ駄目だにゃ。その後の事は後でだと思って気にしてなかったにゃ。」
「私も、レイジさんを助ける事しか考えられていませんでした。視野の狭さを痛感しました。」
そんな三人の様子から聞くべき事を聞き終えた、双子の姉妹である、クラレンスとアリスは、互いに頷き合うとそのまま会議室を出ていこうとする。
「クラレンス、アリス。レイジの事、本当にありがとうございます。」
ルリは二人に改めて頭を下げていた。
「別にいいよ。ぼく達もレイジの事は大事だし、大切なんだからね。」
「そうね。私たちは貴女達のために動いたのではなくて、レイジのためだけに頑張ったのよ。」
双子の姉妹は振り返らず、それだけ言い残して、会議室を出ていく。
「では、私たちもそろそろ戻ります。アメリカの皆さま方、今回は多大な助力をいただけた事を感謝いたします。」
「皆さま、またいずれお会い出来る事を、楽しみしています。」
マーリン、ランも礼を述べると、会議室を後にした。
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